何故だろうか今日は酷く眠れない
本を読んでも、お酒を口にしても
何故だか堂々巡りの意識に苛まれる



「だめだ、もうどうしようもない」




beforehand






いてもたってもいられずベットから降り素足で駆け出す




廊下の冷たさが足を通して身体に鳥肌を立たせる
部屋の前について呼吸を整えノックをしたが
彼からの返事は返ってこなくて



不安になりひたすら探した



また戻ってこないかもしてない人を待つのだろうか


「・・・・・・・・もぅやだ」


結局バッシュの部屋の前に戻ってきていて
壁に寄りかかりずるずるとへたり込みそのまま膝を抱えて座り込んだ。


「靴くらい履いてくればよかった」


両足を擦り合わせ手に息をかけて暖をとっても
心は余計に温かさを失っていく

寂しくて、むなしい―


「―・・・バッシュ」

話しかけてくれなくたって、何だっていいから姿を見て安心したい




「帰ってきてよ」

そう口にすると目頭が熱くて視界が滲んだ
目を強く瞑ってただただ堪えていた









「・・・・どうしたんだこんな所で」

「―!!」


足音も気配も分からなかったのは
それ程塞ぎこんでしまっていたから

「あ、、、」

「何かあったのだろう?」

しゃがみこんだバッシュがの手を取りゆっくりと立ち上がらせる。
眉を寄せた彼が私の指先を包み込む



「温か飲み物を飲んだ方が良さそうだな」


返事を問うように部屋のドアを開かれ、それに無言で頷いた


私よりも生きている時間は長く、
そこには埋められない時間も経験もたくさんある

それでも、こうして彼と同じ時間と同じ空の下に居ることは確かで

ダルマスカという存在が彼の全てだとしても、
それにすら嫉妬しているのだ。

大した事も出来なくて、滑稽に思うこともあるけれど
それでもバッシュの事を好きなことが変るわけもない―


自分が前に進んでいるのか、これで良いのか
皆と違って力を持っている訳でも、ここにいる理由すら朧だから―







「―眠れなくて」

出された紅茶を冷えた体に流し込みながら、ポツリと話す。

『そうか』と静かで落ち着きのある声を聞いてホッと心が和んだ。


「光が強ければ、それだけ影は濃くなるものだ」

「?」

謎掛け、だろうか。
考えても分からずそのまま訊き返してしまった。



、君の事だ」

「、、、、――」


コトリと机に置かれたコップから目線を外しバッシュは真っ直ぐにを見る


「俺にも出来る事はあるだろう。良かったら話してくれないか」

間をおいて続いたの照れ笑いの混じった返事

「もう大丈夫なんです、本当は・・」


器の中で揺らめく自分を見つめながら呟いた。

「不安だったから、それでバッシュの顔が見たくて。でも、もう見たから」

「そうか・・・」


『何が不安だったのか』と、また疑問として沸いて出る。
俺がそうさせるようなことをしてしまったのだろうか―

「もう戻りますね。夜遅くにごめんなさい」

コップを置いて先に立ち上がったのはバッシュの方だった。

「、、見送りはいいですよ?部屋なんですし」

会釈をし歩き出した私の腕を掴んだのは彼の方なのに、逸らされた顔

「聞きたい事があるんだが」

「何です?」

延ばせば延す程、言いづらくなるのは解っているのにその一歩が踏み出せない。

躊躇しているバッシュを見かねて、
もしかして自分の事を言おうとしてるかと思い自分から切り出す


「私が来た事が嫌だったのなら謝ります」

「違う、そんな事ある訳無いだろう」

「それなら、何が」

「・・どうして君は、俺の処に来たのだろうかと」

「からかっているの?」

あれだけの事を言ったのに解らないのはフリをしているのか。

「何故、からかう必要がある」

駄目だ、こんな真面目な顔で問うのだから彼は本気なのだろう。
長くなりそうだな、と小さくため息をついた


「貴方じゃなければダメなんです。それがヒント」


それだけ言い残して部屋を出る、
その直後またドアを開けてもう一言。

「人に聞くのはやめた方がいいですよ。恥ずかしい思いする筈だから」

呆気にとたれた顔をしている彼を残して
最後の忠告を笑顔で告げておやすみなさいと手を振った


これでも答えは出ないだろうか?
人には優しくしておいてそれが無意識というなら酷い話だ

他の人にもそうなのだろうかと考えてしまい、
眉間に皺を寄せ歩いていく真夜中の冷える廊下―